地域おこし協力隊員座談会
082-422-1033
月曜日~金曜日(12月29日~1月3日、祝日は除く)
8時30分~17時15分
地域おこし協力隊員座談会
都市部から過疎地域へ移住を考えている人を地方自治体が積極的に受け入れ、協力隊員自らが提案した活動を通して、地域の振興活動を行っていく制度「地域おこし協力隊」。東広島市でも同制度を取り入れており、各エリアで協力隊員がさまざまな活動を展開しています。
豊栄町、安芸津町、志和町、福富町で活躍する地域おこし協力隊員の皆さんに、日頃行っている活動や、暮らしのなかで見つけたまちの魅力などについて語ってもらいました。
豊栄町地域おこし
協力隊員
陣内綾さん
安芸津町地域おこし
協力隊員
淺田眞紀子さん
志和町地域おこし
協力隊員
櫻井紫さん
福富町地域おこし
協力隊員
生野佑二さん
陣内
私は広島市の出身で、鳥取県の大学に進学し自然保全活動における人材確保の研究などをしていました。研究の傍ら、わら細工を習っていて、卒業後もそのような仕事を田舎でやりたいなと考えていたところ、東広島市の豊栄町で地域おこし協力隊員を募集していることを知り、応募しました。現在は、神社のしめ縄づくりをはじめとした地域に残る伝統的な手仕事の継承、農村文化の周知活動に力を入れています。
淺田
出身が仙台の私は、結婚してから埼玉で暮らしていました。16年間自宅でアーユルヴェーダのサロンとスクールを運営しており、将来的に、田舎の古民家でリトリートの施設をしたいと考えていたところ、地域おこし協力隊を募集していることを知りました。安芸津町の地域おこし協力隊員はフリーミッションで、副業OKという点に惹かれました。自身が60歳の節目を迎え、「私、まだまだやりたいことがある」と感じたことも、チャレンジした理由のひとつです。今は安芸津町で、地域住民の皆さんにアーユルヴェーダやセルフケアの知識、ヨガなどをお伝えしています。
櫻井
私の出身は山口県で、大学進学を機に東広島市へ移住しました。大学では先生方と一緒に、かやぶき屋根の改修や、古民家を借りてのイベント、シェアハウスの運営といった地域活動を行ってきました。海外留学を考えていた時期もあったのですが、コロナ禍で実現することが難しい中、あらためて日本のローカルに目が向くようになりました。大学3年の時に志和町に移住して、4年の時に地域おこし協力隊員のOB・OGの方と知り合いになりました。いろいろとお話を伺う中で、私も志和町で活動を続けていきたいと考え、地域おこし協力隊に応募しました。隊員に任命されてからは、学生時代の地域活動を継続しつつ、活動の幅を広げています。
生野
自衛隊員として14年間勤務していた私は、全国各地を巡ってきました。時には災害復興の現場に派遣され、「自然の脅威の前で人はこんなにも無力なんだ」ということを痛感しました。同時に、組織において自分一人の力で何か行動を起こすことは難しく、自身が得てきた経験や知見を活かして自分の力を試してみたい、誰かの役に立てる活動をしてみたいと考える中で、地域おこし協力隊員という道を選択しました。かつて広島に赴任したことがあり、その時の心証がとても良かったことや、豪雨災害を経験した地域において防災の面から自分のスキルを役立てられるんじゃないかと考えました。また、福富町は、年間30万人が訪れる「道の駅湖畔の里福富」があり、協力隊員としての任期終了後も、何か仕事ができるかもしれないという、この先の考えも持っています。現在は福富町で、防災についての講演や紙芝居をしたり、イベントを行ったりして防災の啓発活動をしています。
陣内
隊員になるまでは、東広島市や豊栄町のことをよく知りませんでした。わら細工をしていきたかったので、稲作が盛んというのが豊栄町を選んだ決め手ではあったのですが、これほどだとは正直思っていませんでした(笑)。初めて住むところに案内してもらった際は「こんなに山奥なんだ」とびっくりしましたね。今では野生動物に会ってもそう驚きません。ネズミや虫にも慣れました。豊栄町は、外から入ってくる住民を受け入れる土壌があると思います。そこがすごく良いところかなと思います。私も自然と地域の人たちと仲良くなり、関係を築くことができました。困った時は頼るなどして、コミュニケーションを取ることを心がけています。
生野
温かくて優しい人が多いですよね。福富町もそうです。地域のサークル活動がさかんで、私も入って一緒に活動させてもらっています。都市部に比べ、コミュニティ活動が活発で絆が強いイメージがあります。陣内さんはどういった時に地域の人を頼るんですか?
陣内
家でネズミが出て困っている、とかですかね(笑)。粘着シートが一番いいよ、なんて教えてもらって活用しています。
淺田
私は以前、東京で暮らしたこともあって、都会は合わないとずっと感じていたんです。安芸津町に来て住む家を案内してもらった時、「すごく広い!ここでこれから暮らすんだ」ってワクワクしたのを覚えています。高齢者施設の見学などもさせていただき、現在はサロンの活動を一緒にしていますが、サロンに参加する人も、ボランティアで手伝ってくれる人も同世代で、すごく元気をもらっています。皆さんとても優しくて、良くしてもらった記憶しかありません。また、安芸津町で暮らすようになって、気候風土が合うのか、肌が乾燥することがなくなったんですよ。「こんなところに住みたかったんだな」って、心身共に実感しています。
櫻井
私も地域になじむ工夫を行わなくても、自然に受け入れてもらえた感じです。志和町に移住するまでは大学の近くで暮らしていたので、「車で20分ほど走ったらこんなに田舎になるんだな」って思った程度です。移住前は車を持っていなかったので距離感があまりわからなかったんですけど、自分で車を運転するようになったらそんなに不便な所ではないなと。暮らしやすいと感じています。
生野
東広島市全体が、海もあって山もあってまちもあって、空港も近いし、確かに暮らしやすいですよね。子育て世帯も増えているし、非常に活気があるなと感じます。福富町もすごく過ごしやすい環境です。私は読書が趣味なんですが、夜に窓を開けて遠くで鳴く野生動物の声を聞きながら本を読む時間が最高ですね(笑)。
生野
現在は道の駅や福富町内各所で防災イベントをしたり、啓発活動を行ったりしていますが、それ以外の地域のちょっとした手伝いを頼まれたりもします。私ができるところはお手伝いしますが、地域おこし協力隊員にはどうしても任期があるので、長期的な視点で解決しなければならない問題などは、関係者で話し合いながら考えるようにしています。任期中は「災害は忘れた頃にやってくる」ことを、あらゆる場面で言い続けて、地域の皆さんの防災に対する意識を高めていきたいと思います。そして任期後も、できれば長く福富町で暮らしていきたい。高齢者が増え、過疎が進むという地域の課題もあるので、経済的な面で何か役に立つことができないか、これから模索していきたいと思います。
陣内
私がこれまでやってきたわら細工は、日本全国どこにでもある文化。けれども地域ごとの特色も必ずあって、豊栄町には5つの神社で、氏子中によるしめ縄づくりの風習が残っていて、それぞれでしめ縄の特徴が違うんです。そういうのをきちんとかたちに残したいなと思って昨年冊子にまとめたところ、とても好評で呉市の方から問い合わせがきたり、「作り手がいないからしめ縄づくりを教えてほしい」という依頼をいただいたり、活動の幅に広がりが出ました。あと7ヶ月で地域おこし協力隊員の任期が終わり、以降は豊栄町内に住みつつ、個人事業でしめ縄やわら雑貨づくりのワークショップ、販売などを行っていく予定です。
淺田
アーユルヴェーダなど体を整える方法をこれまでお伝えしてきましたが、いちばん反響があったのがヨガ。「体の痛みが緩和された」と言ってくれる人もいるので、継続してヨガの会を続けています。これまで安芸津の町には100歳体操という運動の会があったのですが、また違ったかたちで体と健康にアプローチすることができたのは良かったかなと感じています。今後はメンタルケアといった、内面から体を整える方向にも力を入れていきたいです。SNSを使いこなせていないので、この先は少しそちら方面も学びつつ、安芸津の自然豊かな環境と、ここでの暮らしや活動内容を内外に発信していきたいと思います。
櫻井
かやぶき屋根のふき替えや家屋の修繕など、皆で直して、皆で地域を守るというプロジェクトを手がけてきました。人が住んでいないために荒廃が進んでしまっている空き家の保全や、それを誰かにつなげる人と人との結びつきのサポート、かやぶき屋根の材料となるかやの栽培を耕作放棄地で行ったりなど、一連の活動を今後も志和町に住み続けながら続けていきたいです。プロジェクトを進めるうちに、自主的に動いてくださる地域の人たちもずいぶん増えました。ただ活動を行うのではなく、そこに関わる人をこれからも増やし、「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識を醸成していけたらと思います。