”東広島LOVEな人”に聞いてみた
移住・創業インタビュー
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月曜日~金曜日(12月29日~1月3日、祝日は除く)
8時30分~17時15分
”東広島LOVEな人”に聞いてみた
移住・創業インタビュー
◎東広島市豊栄町在住 40歳 ◎居住歴:10ヶ月 ◎出身地:東広島市豊栄町
※2025年1月取材
学生の頃から好きだった洋服の仕事に携わりたいと、30歳の節目に東京でスタイリストに転職。4年間のアシスタント生活を経て独立を果たした。7年ほど東京で暮らしていたが、職業柄、洋服や資材のストックに困っていたことや、育児環境を考慮して2024年に地元である豊栄町にUターン。現在は東京と広島でそれぞれ仕事をしながら、これまでにない働き方や、新しい生活スタイルを模索している。
学生時代は両親の勧めと、寮生活に興味があったことから寮生活ができる呉工業高等専門学校の建築学科へ進学しました。建築の世界で働くのは親の勧めでもあったので、途中で大学に編入し、工学部で建築についてさらに学びを深めました。その後建設会社に就職し、それなりに充実した日々を送ってはいたのですが、心のどこかで少しだけくすぶっているものがあったのです。それは、学生時代から好きだった「洋服の仕事に就きたい」という思い。学生時代はファッション誌が隆盛を極めていて、そこでセンスあふれる提案をするスタイリストという仕事に強い憧れを持っていました。一方で、「自分はまだ、建築の仕事の面白さがわかっていないのかもしれない。一生懸命に取り組んでみたら、また違った側面が見えてくるのかも」と考え直し、7年間ほどはがむしゃらに働いてみました。しかし、どうしても「洋服の仕事がしたい」という思いを消し去ることができなかったのです。
自身が30歳の頃、一念発起して上京。事前にインターネットで調べて、スタイリストのアシスタントに応募し、採用を勝ち取ることができました。4年間はアシスタントとして、洋服のリースや、雑誌、CMなどの撮影現場、資料の整理など、とにかくあらゆる業務をこなしました。洋服のみならず、内装のスタイリングの仕事もあり、多角的にスタイリストの仕事を学ばせてもらいました。
34歳の時に個人事業主として独立。屋号を『tacos tacos Hollywood』と名付け、洋服の貸し出しやコーディネートといったこれまでと同じような業務をベースにしつつ、内装関係の仕事も徐々に増えていきました。結婚式場で花や布を使い、空間装飾にも携わるようになりました。しかし仕事の現場は地方都市にある結婚式場のことも多く、小さな子どもを抱えている我が家では、家族みんなで現場に行かなければならないことも。当時、東京の花屋で働いていた妻と共に装花を制作し、ワゴン車に資材を積み込み、家族で現場に向かう日々は楽しくもありましたが、小さな子連れの現場はなかなか大変でした。また、家のなかは仕事柄、洋服や造花、布といった資材がつねにあふれており、作業場を借り続けるのも費用がかさむし、どうしようかと思い悩んでいたのです。
いろいろと考えを巡らせた末、私と妻の故郷である豊栄町にUターンすることに。オンライン打ち合わせなどもコロナ禍で浸透し以前よりも当たり前になり、「東京から離れていても仕事ができるのでは」と前々から感じてもいました。さらに豊栄町は広島空港まで車でわずか20分程度の距離。広島に拠点を移すことが、仕事の足かせになるとは考えにくかったのです。Uターン後は、東広島市の移住者等創業支援事業補助金の交付を受け、実家の納屋を改装して仕事の拠点に。抱えきれないほどだった資材もすっきり納めることができ、仕事がよりスムーズになりました。また、互いの両親がいる地元は、やはり子育ての安心感が違います。どちらの両親も帰郷を喜んでくれ、孫の面倒も見てくれて本当に感謝しています。
現在私は、東京と広島で月の半分ずつを過ごす生活をしています。現場に赴かないといけない仕事の時には東京に行きますし、それ以外のオンラインでの打ち合わせや資料作成などは、広島で行っています。地元に戻ってきたことで得られた仕事の気付きもあり、例えば町行く人の普段の姿を現場で活かすことができています。ドラマや映画の撮影などは都会の人々だけでなく、地方のおじいちゃんおばあちゃんや、近所のおじさんなど、普通の役の人も大勢いるわけです。そういう時に、「これがリアルな洋服の着方だな」と参考になったり、このあたりで採集できる植物を撮影に使ったりもしています。そもそもこちらでは時間がゆったり流れているので、オンオフの切り替えがしっかりできるようになり、仕事の準備に集中できたり、頭のなかの整理がしやすくなりました。
時間や気持ちにゆとりができたのは妻も同様で、これまでの経験を活かし、個人で花の仕事をスタート。『Drone beetle』という屋号で、スワッグやリース作りのワークショップなどを開いています。以前から地元に根付いて営業している知人のお菓子屋さんや喫茶店を、出張店舗として使わせてくれたり、知り合いの園芸店を紹介してくれたりと、地元ならではの人のつながりに大いに助けられています。
妻は今後、実店舗を持つことが目標。私自身は少しずつ広島の仕事を増やしていき、軸足をこちらに移していきたいと考えています。地方のエッセンスを取り入れた東京の仕事ではなく、東京にあるものをこちらに呼び込むような、“地方を主役にした仕事”を手掛けてみたいですね。